「入試の基礎知識」を見てみよう

大学受験に置いて、志望校と受験校という言葉がよく使われます。 志望校は、自分が行きたい大学のことで、受験校は実際に受験する大学のことですね。 志望校と受験校が同じであることが一番ですが、大学受験は様々なシステムがあり、実際に受験できる大学も1つではありませんから、第一志望の大学のみを受験する受験生は少ないのが現状です。 では、大学受験で受験校というのは、いつ、どうやって決めるのでしょうか。 今回は、大学受験における受験校選びと、そのポイントについて大学受験のシステムも含めてご紹介します。

志望校と受験校は別

大学受験のために勉強に励んでいる学生に、志望校はどこ?と聞くと、様々な答えが返ってきます。 将来の夢の実現のために学部学科で志望校を決めている学生もいれば、あこがれの大学に進学したい、という理由で志望校を決めている学生もいます。 そもそも大学で学ぶ内容は、高校とは比べ物にならないほど専門的になりますので、進学する大学や学部、学科を決めるということは、自分の今後に大きな影響を与えます。 多くの受験生は自分の将来を真剣に考えて志望校を決めていきます。 もし今、まだ志望校が決まっていないのであれば、まずは自分の将来を一度考えてみましょう。 そして、自分の望む将来のためにはどの大学、学部に進学すればいいのかを調べてみて下さい。 そうして決まった志望校ではありますが、大学受験では志望校が必ずしも受験校になる、ということではありません。 なぜ、そうなるのでしょう。 志望校と受験校が異なってしまう大きな原因は、大学を受験できる回数と、受験科目の配点にあります。 では、まずは受験回数から見ていきましょう。

受験校を決める時期は大きく分けて3回

現在の大学受験のシステムでは、受験をする時期、いわゆる願書を出す時期は大きく3つです。 まずはこの願書を出す時期を確認していきましょう。

・9月~10月

この時期に願書を提出するのは、学校推薦入試や総合型入試です。 近年定員が増えている学校推薦型入試や総合型入試は各大学によって人数や課される受験内容が多岐にわたっています。 自分の志望する大学が学校推薦入試や総合型入試を取り入れている場合には、この時期が最初の願書提出になります。 ただしこれらの入試では、評定平均や資格検定など出願資格が決まっているものがほとんどですので、まずは自分がそれらの条件に当てはまっているかどうかの確認が必要です。 また、学校推薦入試や総合型入試のほとんどで面接が取り入れられています。 これらの入試では、いかに自分がその大学や学部で学びたいのかをアピールすることが必須です。 とはいえ、ただ単に入りたいんです、といった内容では到底合格することはできません。 自分がその大学、学部で学びたい理由をしっかりとした下調べのもとに主張することが必要です。 しっかりとした下調べというのは、1日2日でできるものではありません。 また入試の内容も、筆記試験の外に小論文やディスカッション、ワークショップなどといった普段の授業だけではなかなか対策が難しい内容になっている大学が多くなっています。 実際、学校推薦入試や総合型入試を受験する学生は、ほとんどが4月5月といった早い段階から面接に向けた準備を行って、受験に臨みます。 自分の志望校で学校推薦入試や総合型入試がある場合には、早い段階から、これらの入試に向けた対策を考えましょう。 逆に、願書提出期間ぎりぎりでこれらの入試の受験を考えるのはあまり現実的とは言えません。 早い段階から準備をしていない場合には、無理をして受験する必要はないでしょう。

・12月~1月上旬(大学入試共通テスト前)

共通テストに向けての対策真っ最中であるこの時期の出願は、見落とされることが多いのですが、この時期に出願できる入試は、受験生にとって非常に大きな意味を持つものです。 この時期の出願は大きく分けて2つあります。 1つは、私立大学の特待生などの受験です。 私立大学ではそれぞれの大学独自の特待生制度を持っており、特待生専用の受験を行う大学が近年増えてきています。 この特待生専用の受験が、本格的な受験シーズンより先に行われることが多く、ほとんどの大学で共通テストの前に行われます。 私立大学の特待生を考えている場合には、この時期の出願を忘れないようにしましょう。 この時期に出願するもう1つは、難関校と言われる私立大学の共通テスト利用受験です。 ほとんどの私立大学では、実際に受験生を集めて筆記試験などを行う一般受験の外に、共通テストの成績だけで合否を判断する受験方法があります。 多くの私立大学では、この共通テスト利用入試の出願は共通テスト後になっていますが、難関校と呼ばれる大学では、実際に共通テストを受ける前に出願が締め切られるところが多くなっています。 これらの大学を第一志望にしている場合には、受験回数を増やすというメリットがあるので、忘れずに出願しましょう。 また、第一志望が国公立大学の場合でも、万が一に備えて私立大学の受験を考える場合には、この共通テスト利用の受験は大きなメリットがあります。 そもそも国公立大学を志望する受験生にとって、二次試験前は大切な追い込みの時期です。 その時期に私立大学の受験が入ってくると、時間も労力も大きく削られてしまいます。 特に受験校から遠く離れた場所に住んでいる場合には、移動時間も必要です。 しかし、共通テスト利用受験では、出願さえしておけば、共通テストの成績で合否が判定されますから、時間を使って受験場所に行ったり、受験したりする必要がありません。 メリットの多い私立大学の共通テスト利用受験ですが、毎年、共通テスト終了後に出願しようと思ったらもう出願の締め切りを過ぎていた、という声を聞きます。 特に難関私立大学を視野に入れている場合には、この時期の出願に気を付けましょう。 ただし、共通テスト利用受験は、一般受験に比べると難易度が高くなる傾向にありますから、出願する場合には模擬試験の判定結果などを踏まえて受験校を決定するようにしましょう。

・1月下旬~2月上旬(大学入試共通テスト後)

この時期は、国公立大学の出願がメインになります。 この時に注意しておきたいのは、国公立の出願は、共通テストの自己採点の結果を踏まえての出願になる、ということです。 どんなに行きたい大学であったとしても、共通テストの結果が思った以上に悪かった場合は、二次試験の配点を考えてその大学の受験自体を断念せざるを得ないこと考えておく必要があります。 特に、二次試験の配点が少ない大学や学部では、二次試験の満点を共通テストの点数に加算しても昨年の合格最低点に届かない場合には、合格する可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。 もちろん、第一志望の大学を受験校に設定できることが一番です。 しかし、受験では何が起こるかわかりません。 そして、共通テストが終わってから国公立大学の出願までは2週間程度しか時間がありません。 共通テスト後になって、思うような結果でなったからといって、そこから受験校を考え直したり、入試要項を取り寄せたりするというのはなかなか大変なことです。 ですから、国公立を第一志望に考えている場合には、共通テストの結果が良かった時、いつもと同じだった時、悪かった時、という3つのパターンでの受験校をあらかじめ想定しておく必要があります。 また、国公立大学は前期、中期(主に公立大学で実施)、後期(国立大学でも実施していない大学、学部もある)の最大3回の受験が可能ですが、このすべての受験の出願締め切りは同一で2月上旬になっています。 後期試験の出願は後からできると勘違いしないよう注意しましょう。 このように、大学を受験できる回数は何度もあります。 また、国公立大学では前期、中期、後期と受験できる回数が最大で3回であるのに比べて、私立大学は受験日程さえ重ならなければ何校も受験することも可能です。 単純に志望校の出願だけを考えるのではなく、それぞれの出願時期に合わせた出願プランを立てておきましょう。

受験科目の配点

大学受験において受験校を決定するのが難しい理由には、受験科目の配点の違いもあります。 ほとんどの国公立大学では、文系理系を問わず共通テストで5教科を受験する必要があることから、すべての教科を満遍なく勉強することが大切だと考えている受験生は少なくありません。 しかし、志望校を受験校にするためにはこれは必ずしも正しいとは言えません。 実際の大学入試での科目ごとの配点を見てみましょう。

・名古屋大学(工学部)

共通テストの配点…国語(200点)、社会(100点)、数学(100点)、理科(100点)、英語(100点)、合計600点 二次試験の配点…数学(500点)、理科(500点)、英語(300点)、合計1300点 名古屋大学の工学部では、共通テストと二次試験の合計1900点で合否が決まりますが、全体で考えると、社会の割合は5.3%しかありません。

・東京工業大学

共通テストの配点…国語(200点)、社会(100点)、数学(200点)、理科(200点)、英語(250点)、合計950点 二次試験の配点…数学(300点)、理科(300点)、英語(150点)、合計750点 東京工業大学では、共通テストは950点満点ですが、実はこの点数は、二段階選抜のための基準、いわゆる「足切り」に使用するだけで、実際の合否は二次試験の3教科750点で決まります。

このように、大学や学部、学科によって科目ごとの配点は大きく異なっていますから、それぞれの大学の配分に合わせた受験勉強が必要になります。 もちろん志望校に合わせた受験対策をしてきて、その大学を受験するのであれば問題はありません。 しかし、共通テストのあとで共通テストの点数に合わせて受験校を決定する場合には、共通テストと二次試験の科目の配分をよく確認し、自分の得意な科目の配点が高い大学を受験校に選ぶことが必要になります。

まとめ

大学受験では一言で受験校と言っても、その意味は高校受援とは大きく異なります。 自分の志望してきた大学を受験できることが一番ですが、そうではない場合の想定し、受験の時期や科目の配点に合わせて、より自分にとって有利な大学を受験校にすることが大切です。